輪島塗 塗師屋 Nakatsu Shikki

漆黒の中に銀の光を宿す、独自の技を受け継ぐ輪島塗 中津漆器店

輪島塗は、木地に下地を施し、漆を何度も塗り重ねながら、一つの器を仕上げていきます。
表からは見えない下地にも手をかけるのは、器を美しく仕上げるためだけではありません。日々の暮らしの中で使われ、長い時間に耐えられる丈夫さをつくるためです。

塗って、乾かし、研ぐ。
その工程を幾度も繰り返しながら、少しずつ器の表情を整えていく。輪島塗の美しさは、最後に施される一層の漆だけではなく、目には見えないところを含めた、長い仕事の積み重ねによって生まれます。
中津漆器店もまた、長く輪島の地で漆器づくりに携わってきました。
そして、その歩みの中で受け継がれてきた技術の一つが、銀を用いた漆器です。

漆の中から銀の光を研ぎ出す
中津漆器店には、三代目が考案した銀の漆器の技法があります。
粒子の粗い14号の銀粉を用い、その上から漆を塗り重ね、乾燥させた後に青砥と呼ばれる砥石で少しずつ研ぎ出していく。
漆に包まれた銀を、研ぎによって再び表面へ現していく仕事です。、研ぎによって再び表面へ現していく仕事です。
どこまで研ぐのか。
砥石をどの角度で当て、どのくらいの力を加えるのか。
研ぎ進めるわずかな違いが仕上がりに影響するため、経験によって身につけた感覚が欠かせません。
黒い漆の中から現れる銀の光は、金のような華やかさとは異なります。

光を受けたときに静かに浮かび上がる、その控えめな表情も、銀漆器の魅力
中津漆器店では、この銀の漆器の技術が代々受け継がれてきました。
美智子さまご婚礼の際には銀の漆器による屠蘇器を、浩宮さまのご元服の際には黒塗りの台を手がけるなど、皇室にまつわる仕事にも携わっています。

「塗師屋」でありながら、「一人の職人」でもある

中津漆器店を特徴づけているのは、独自の銀漆器という技法だけではありません。
輪島塗は、木地、下地、塗り、蒔絵、沈金など、100を超える工程を専門の職人が担う分業によって成り立っています。

その中で「塗師屋(ぬしや)」は、それぞれの工程を見渡し、職人たちと相談しながら、一つの漆器を完成へ導いていく役割を担います。
木地をつくる人。
下地を施す人。
漆を塗る人。
蒔絵や沈金を施す人。
それぞれに技術があり、それぞれの仕事があります。
中津漆器店では、そうした職人たちと対話を重ねながら、素材の状態や工程ごとの仕上がりを確かめ、次の仕事へとつないでいきます。

言葉を交わし、手を動かし、また確認する。
一つの漆器が完成するまでには、そうしたやり取りが何度も繰り返されます。
そして中津漆器店の特徴は、全体を見渡す塗師屋でありながら、自らも一人の職人として手を動かしてきたことにあります。自分自身が工程の難しさを知っているからこそ、職人が抱える苦労も分かる。一方で、全体を預かる立場だからこそ、完成のために伝えなければならないこともある。

職人としての目線と、塗師屋として全体を見る目線。その二つを持ちながら、それぞれの職人と向き合い、一つの漆器をつくり上げていく。任せるだけではなく、自らも手を動かす。指示するだけではなく、職人の仕事に耳を傾ける。そうした一つひとつの工程に向き合う姿勢が、中津漆器店の漆器を支えています。そこには、技術だけでは測れない、ものづくりへの敬意と、輪島塗への思いがあります。

三代目が考案した銀の漆器の技法は、4代目・中津正克氏へ、そして5代目・中津正典氏へと受け継がれています。

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