松煙墨

紀州松煙_rimapmura_

🟠 松煙墨の特徴/魅力

松煙墨の大きな魅力の一つに奥行き、立体感や動きなどを与え、表現の幅を広げてくれる”にじみ”の面白さがあります。煤の粒子がバラバラである松煙墨は、粒子が細かく均一である油煙墨より、にじみの表現を得意としています。初心者にとっては、コントロールが効かないにじみはハードルが高いとも言えますが、だからそ面白いのがにじみでもあります。紙選びを工夫しながら、是非自分にしか出来ない表現を見つけてください。

松煙墨は落ち着きのあるマットな墨色が特徴です。その秘密は素材と作り方にあります。松煙墨の原料は松を燃やして作られる松煙(煤)、膠と香料。焚がまが据えられた部屋で燃やされ、天井や壁に付着した松の煤は粒子の大きさがバラバラです。粒子は細かいと赤系、大きくなると青系となります。松煙墨が青系となるのはそういった理由からです。また、松煙墨の淡墨は透明感を感じさせます。

書道界の風雲児と呼ばれた榊莫山氏は、松煙墨の魅力を文房四宝 墨の話(角川書店)の中で「澄み切った、それでいて厚みのある墨の色」と表現しています。

🟠 松煙墨ができるまで

紀伊熊野は山が深く老松が生い茂り、松煙生産には最適の地でした。そのため古くから紀州松煙として墨の代表的産地の奈良へ供給を続けてきました。長い歴史を誇る煤「松煙」ですが、現在日本で採煙を行っているのは、和歌山の山間で墨工房 紀州松煙を営む堀池氏ただ一人。松煙は貴重で手に入りにくくなっています。

伝統的「障子焚方式」
松煙の原材料は赤松ですが、どんな状態の松でも良い訳ではありません。松脂が凝縮した松材を的確に目利きしなければなりません。その吟味された松材を小割にして一本ずつ、焚がまの中でゆっくりと火種を絶やさないように100時間燃やし続けるのが伝統的「障子焚方式」です。
堀池氏は、焚がまが据えられた二畳ほどの大きさの障子部屋に付着した煤を掃き落として採煙します。文字通り、頭の先からつま先まで煤だらけになる大変な作業です。もともとは障子で周囲と天井を囲い、松材を燃やした後、障子紙についた煤を採っていたそうですが、現在では火炎防止のために、金網の上に耐火性の布を貼ったものを使っているそうです。

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