書道や水墨画で使う筆や硯は、使うものというより育てるもので、創作活動におけるかけがえのない相棒です。是非、まずは相棒、職人の方々が人生をかけて作られたお道具のその美しい姿を見つめてみてください。職人さんの思いの詰まったお道具たちはきっと皆さんに話しかけてくれると思います。rimpamuraは、お道具との対話が良い作品づくりの第一歩と考えています。
こちらでは職人の皆さんに伺った、個性豊かなお道具たちの取り扱いの注意事項、そしてお手入れのポイントをご案内します。
墨 Sumi ink
<取り扱い上の注意>
1. 墨を磨ったあとは、すぐに拭き取ってください。そのままにしておくとヒビやワレの原因になります。
2. 墨は急激な温度変化を嫌います。直射日光の当たる場所や冷暖房機器などの近くでの使用、保管は損傷の原因になります。保管する際は、温度変化の激しい場所を避けてください。
3. 湿度の高い所での保管はカビの発生の原因となるため極力避けてください。
4. 使用後は桐箱に入れて保管して下さい。また、出来れば机の中や墨箱など温度変化が少ない場所保管をオススメします。
筆 Fude
- <取り扱い上の注意>
筆の扱いにおいて最も気を配らなければならないのが穂先です。命毛と呼ばれる穂先の最先端部分は書き味を左右するため、特に質の良い毛が使われ、また職人さんが一番神経を使っている部分です。強い衝撃を与えたりしないように気を配ってください。
<紙巻筆>
- 新しい筆をおろす時:紙巻筆は構造的に筆た途中までしかおりません。新しく紙巻筆をおろす時には、命毛を痛めない様に優しく穂先から指で丁寧にほぐしていきます。
- 使い終わった時のお手入れ:スポンジなどに水を含ませ、少しずつ墨を拭き取っていきます。墨が少し残りますが、先の効きを生かすため、筆の形を崩さないようにするためです。
<水筆 – 太筆/羊毛筆>
- 新しい筆をおろす時:条幅など大きな作品、また柔らかい毛質の特性を生かして繊細な表現を得意とする羊毛筆は、穂全体を使います。
糊固めされている筆は、穂先をぬるま湯につけます。糊が柔らかくなってきたら、穂先から根元へと少しづつ、優しくほぐしていきます。
*ぬるま湯につけることで、糊が溶けて毛に負担が少ないのでこの方法をおすすめしています。 - 使い終わった時のお手入れ:ぬるま湯で根元部分をもみほぐすように洗います。根元に墨が残らないように、しっかりと洗います。
- 新しい筆をおろす時:条幅など大きな作品、また柔らかい毛質の特性を生かして繊細な表現を得意とする羊毛筆は、穂全体を使います。
<水筆 – 細筆>
- 新しい筆をおろす時:どの位おろすかには、特に決まりはありませんが、穂先の3分の1が一般的です。
穂先をぬるま湯につけて、おろしたい部分まで優しく穂先をほぐしていきます。 - 使い終わった時のお手入れ:スポンジなどに水を含ませ、少しずつ墨を拭き取っていきます。
- 新しい筆をおろす時:どの位おろすかには、特に決まりはありませんが、穂先の3分の1が一般的です。
- お手入れの注意点
- 一度使った筆にキャップは使わないようにしてください。密封されることで、根元が腐ってしまいます。
- 筆はとても繊細なお道具です。特に命毛を痛めないよう、優しく扱ってください。
- 石鹸や洗剤、また柔軟剤などは使用しないようにしてください。墨の含みが悪くなります。
- 洗った後はしっかり乾燥させてください。筆吊りなどに吊るして自然乾燥させるほか、反故にする半紙の上に筆を置いて半紙に水分を吸わせて乾燥させる方法もおすすめです。
- 長持ちさせたい大切な筆は、墨汁ではなく、固形墨を磨った墨液をおすすめしています。
- 筆は休ませることも大切です。お気に入りの筆を見つけた場合には、数本持ち、交代で使うことで長持ちします。
硯 Suzuri Inkstone
墨を磨り続けていると、紙の繊維や墨の膠が付着・凝固して目詰まりし、硯表面の鋒鋩(ほうぼう)がなくなって墨が磨りにくくなります。硯に水を張り、泥砥石で丁寧に磨くことでその鋒鋩を蘇らせることができます。
硯にたっぷりの水をいれ、優しく丁寧に泥砥石で硯の表面を撫でるように磨きます。泥砥石と硯の硬さが合わないと硯にキズがつく場合がありますので、産地が同じ泥砥石で磨くことをおすすめしています。