2022年、和歌山県田辺市内で、昭和の時代に作られた墨の原料「紀州生まつ松煙(しょうえん)」の俵が発見されるという日本の松煙の歴史においてある重要な出来事がありました。
生きまつ松煙と言うのは、傷をつけて松ヤニがにじみ出た松材を燃やしてとる煤(すす)で、かつては紀州の特産品として知られていました。
しかし、田辺市で4代100年に渡って松煙問屋を営んでいた新仁商店が1958年に閉店。4代目の当主故鈴木桂一郎氏が、資料として保管していた全ての松煙で記念墨200丁を作りその歴史に幕を引きました。
これにより、当時の松煙はもう残っていないと信じられていましたが、5代目にあたる鈴木恭一氏が、蔵で俵を発見。その煤俵を開封する様子は、地元紙紀伊民報が一面にて大きく紹介しています。

発見された貴重な煤俵は、紀州にて松煙づくりを行う、日本で唯一の松煙職人 紀州松煙の堀池さんに託され、「生きまつ松煙 紀州墨」として生まれ変わりました。
65年寝かせられた煤は「しっとり」としていて熟成の良さを感じられた様ですが、墨となったのは2022年。固形墨としてはまだ若いので、育てるという別な楽しみも与えてくれています。