小林東雲先生に、紀州墨を試していただきました。

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紀州の豊かな自然と伝統を受け継ぎ、伝統的な製法で「紀州墨」を現代に伝える墨職人・堀池雅夫氏。長年の研鑽と妥協のないものづくりによって生み出されるその墨は、書道家や水墨画家など多くの専門家・表現者から高い評価を得ています。

このたび、堀池氏が水墨画家 小林東雲先生を訪問。自身が丹念に造り上げる「紀州墨」を試していただく貴重な機会に恵まれました。
東雲先生は、内閣総理大臣賞や文部科学大臣賞を受賞し、国指定重要文化財「大本山善導寺」の障壁画を手掛けるなど、日本を代表する水墨画家。映画『線は、僕を描く』の水墨画監修や「美は国境を越えて」の主催を務めるなど最高峰の実績を持ちながら、常に気さくで温かいお人柄で知られます。

けれど、墨一色で描く世界の広がりについて語り始めると、その眼差しは一変します。

墨は、ただ黒いだけではありません。
濃淡、にじみ、かすれ、光の受け方。使う墨によって現れるさまざまな「墨色」の違いを感じ取りながら、一つの色の中にどれだけ多くの表情を引き出せるか。
東雲先生は、墨が持つその可能性を大切にされています。

だからこそ、堀池氏にとっても、長い時間をかけて自らつくり上げてきた紀州墨を、東雲先生に実際に使っていただくことは、楽しみであると同時に、少し緊張する瞬間だったのではないかと思います。

実際に墨をすり、筆を運ぶ東雲先生。

東雲先生は、煤の古さだけで墨の性質が決まるわけではないことに触れ、堀池氏が使う和膠にも注目されました。
墨としては新しくても、古い煤と和膠を用いることで、やわらかな表情が生まれる。その違いを確かめるように筆を運びながら、墨の濃淡やにじみ、紙の上での広がりを楽しんでいました。

長い時間を経た古墨が見せる表情と、古い煤を用いながらも、墨としては新しく生まれた堀池氏の松煙墨。
同じ「墨」という道具でも、そこに使われる煤や膠、そしてつくられてからの時間によって、紙の上に現れる表情は変わります。
その違いを、実際に筆を動かしながら確かめていく。
墨をつくる職人と、墨で表現する画家。その二人だからこそ交わされる会話が、そこにはありました。

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