芸術新聞社発行の書道専門誌『墨』が、このたび創刊50周年を迎えられました。半世紀にわたり、書道文化を見つめ、その魅力を伝え続けてこられたことに、心より敬意とお祝いを申し上げます。
創刊50周年記念号となる第301号では、「書を支える文房四宝の職人たち」と題した特集が組まれています。
文房四宝とは、硯・墨・筆・紙のこと。書や水墨画に欠かすことのできないこれらの道具は、それぞれの産地で受け継がれてきた職人の技術によって支えられています。

今回の特集では、文房四宝の文化を支える12名の職人が紹介されています。そのなかには、私たち rimpamura が日頃からものづくりをご一緒している7名の職人の皆さんも掲載されています。
- 紀州墨 紀州松煙 初代 堀池雅夫
- 攀桂堂 十五代目 藤野運平
- 奈良筆 菅城 二代目 鈴木一朗
- 赤間硯 日枝玉峯堂 三代目 日枝玉峯堂
- 奈良墨 錦光園 七代目 長野睦
- 墨型彫刻 形集(中村家) 八代目 佐藤奈都子
- 雨畑硯 硯峯堂本舗 四代目 雨宮峯硯
長い年月をかけて受け継がれてきた技術が、このような形で広く紹介されることを、自分たちのことのように嬉しく感じています。
「弘法筆を選ばず」という言葉があります。しかし、それは道具の価値を否定する言葉ではありません。
私たちは、優れた表現とは、書き手だけの力で生まれるものではないと考えています。職人が素材を見極め、何十、何百という工程を積み重ねて生み出した硯や墨、筆や和紙には、それぞれの思想と技術が宿っています。その道具が表現者に新たな発見をもたらし、表現者の探求が職人のさらなる挑戦を生む。そうした対話の積み重ねが、日本の書文化を豊かに育んできたのではないでしょうか。
江戸時代、本阿弥光悦は京都・鷹峯に職人や芸術家が集う「光悦村」を築きました。互いの技術や美意識を磨き合いながら、新たな文化が生まれたその精神は、今も私たちの理想です。
私たち rimpamura は、日本各地で受け継がれる文房四宝の職人とともに、その技術や背景にある物語を伝え、作り手と表現者、そして道具を愛する人々がつながる場を育んでいきたいと考えています。
『墨』301号は、道具の向こう側にある職人の仕事と哲学に出会える、たいへん貴重な一冊です。
ぜひ多くの方に手に取っていただき、日本の文房四宝文化を支える職人たちの技と想いに触れていただければ幸いです。

